この記事では、無裁定条件とリスクの市場価格の関係について述べる。
結論を先に言えば、「無裁定条件の成立」と「リスクの市場価格が存在し一意に定まること」は同値である。
以下、この関係が成り立つことを簡易的に証明する。
本記事の内容は下記書籍の内容を参考にしているため、合わせて参照してほしい。
\[ \begin{split}
dS=\mu S dt +\sigma S dz_t
\end{split} \]ここで\( dz_t\)は標準ブラウン運動である。
この原資産の上に書かれたデリバティブ(金融派生商品)を\( C\)とする。
\( C\)の変動は以下の確率微分方程式によって記述されるとしよう。
\[ \begin{split}
dC=\mu_C C dt +\sigma_C C dz_t
\end{split} \]
これら資産を用いて、以下のポートフォリオを組む事を考える。
ヘッジ・ポートフォリオの価値を\( H\)と表せば、
\[ \begin{split}
H=-C+C_S S
\end{split} \]が成り立つ。
ヘッジ・ポートフォリオの価値変化\( dH\)は
\[ \begin{split}
dH&=-dC+C_S dS\\
\\
&=-\left( \mu_C C dt+\sigma_C C dz_t\right)\\
&~~+C_S\left\{ \mu S dt+\sigma S dz_t\right\}\\
\\
&=\left( \mu S C_S-\mu_C C\right)dt\\
&~~+\left( \sigma S C_S-\sigma_C C \right)dz_t\\
\end{split} \]となる。
伊藤の公式より
\[ \begin{split}
dC&=\mu_C C dt+\sigma_C C dz_t\\
&=\left( \mu S C_S -\frac{ 1}{ 2}\sigma^2 S^2 C_{SS}\right)\\
&~~+\sigma S C_S dz_t
\end{split} \]であり、\( dC\)の拡散係数を比べると
\[ \begin{split}
\sigma S C_S&=\sigma_C C
\end{split} \]であるから、ヘッジ・ポートフォリオの拡散項は\( 0\)である。
したがって、ヘッジ・ポートフォリオは無リスクということがわかる。
したがって、
\[ \begin{split}
\left( \mu S C_S-\mu_C C\right)dt&=rHdt\\
&=r\left( -C+C_S S\right)dt\\
\Leftrightarrow \mu S\frac{\sigma_C C }{ \sigma S}-\mu_C C&=-rC+r \frac{\sigma_C C }{ \sigma S}S\\
\Leftrightarrow \frac{ \mu-r}{ \sigma}&=\frac{ \mu_C-r}{ \sigma_C}\equiv\theta
\end{split} \]となる。
この式は原資産とデリバティブのリスク1単位あたりの超過収益を示しており、これをリスクの市場価格と呼ぶ。
この式からわかることは、リスクの市場価格\( \theta\)は原資産とデリバティブに共通して定数として存在し一意に定まるということである。
逆に、リスクの市場価格が一意に定まれば、逆の式変形によって、ヘッジ・ポートフォリオの瞬間的な収益率が安全資産収益率に等しくなるという無裁定の関係式が導出できる。
以上より、
「無裁定条件の成立」と「リスクの市場価格が存在し一意に定まること」は同値である。
結論を先に言えば、「無裁定条件の成立」と「リスクの市場価格が存在し一意に定まること」は同値である。
以下、この関係が成り立つことを簡易的に証明する。
本記事の内容は下記書籍の内容を参考にしているため、合わせて参照してほしい。
目次
ヘッジ・ポートフォリオ
市場に1つの原資産\( S\)が存在して、以下の確率微分方程式によって原資産の変動が記述されるとしよう。\[ \begin{split}
dS=\mu S dt +\sigma S dz_t
\end{split} \]ここで\( dz_t\)は標準ブラウン運動である。
この原資産の上に書かれたデリバティブ(金融派生商品)を\( C\)とする。
\( C\)の変動は以下の確率微分方程式によって記述されるとしよう。
\[ \begin{split}
dC=\mu_C C dt +\sigma_C C dz_t
\end{split} \]
これら資産を用いて、以下のポートフォリオを組む事を考える。
- デリバティブを1単位ショート
- 原資産を\( C_S\)単位ロング
ヘッジ・ポートフォリオの価値を\( H\)と表せば、
\[ \begin{split}
H=-C+C_S S
\end{split} \]が成り立つ。
ヘッジ・ポートフォリオの価値変化\( dH\)は
\[ \begin{split}
dH&=-dC+C_S dS\\
\\
&=-\left( \mu_C C dt+\sigma_C C dz_t\right)\\
&~~+C_S\left\{ \mu S dt+\sigma S dz_t\right\}\\
\\
&=\left( \mu S C_S-\mu_C C\right)dt\\
&~~+\left( \sigma S C_S-\sigma_C C \right)dz_t\\
\end{split} \]となる。
伊藤の公式より
\[ \begin{split}
dC&=\mu_C C dt+\sigma_C C dz_t\\
&=\left( \mu S C_S -\frac{ 1}{ 2}\sigma^2 S^2 C_{SS}\right)\\
&~~+\sigma S C_S dz_t
\end{split} \]であり、\( dC\)の拡散係数を比べると
\[ \begin{split}
\sigma S C_S&=\sigma_C C
\end{split} \]であるから、ヘッジ・ポートフォリオの拡散項は\( 0\)である。
したがって、ヘッジ・ポートフォリオは無リスクということがわかる。
無裁定とリスクの市場価格
ヘッジ・ポートフォリオが無リスクであることから、ヘッジ・ポートフォリオの瞬間的な収益率は、安全資産収益率(無リスク利子率)\( r H dt\)に等しくなければならない(無裁定条件)。したがって、
\[ \begin{split}
\left( \mu S C_S-\mu_C C\right)dt&=rHdt\\
&=r\left( -C+C_S S\right)dt\\
\Leftrightarrow \mu S\frac{\sigma_C C }{ \sigma S}-\mu_C C&=-rC+r \frac{\sigma_C C }{ \sigma S}S\\
\Leftrightarrow \frac{ \mu-r}{ \sigma}&=\frac{ \mu_C-r}{ \sigma_C}\equiv\theta
\end{split} \]となる。
この式は原資産とデリバティブのリスク1単位あたりの超過収益を示しており、これをリスクの市場価格と呼ぶ。
この式からわかることは、リスクの市場価格\( \theta\)は原資産とデリバティブに共通して定数として存在し一意に定まるということである。
逆に、リスクの市場価格が一意に定まれば、逆の式変形によって、ヘッジ・ポートフォリオの瞬間的な収益率が安全資産収益率に等しくなるという無裁定の関係式が導出できる。
以上より、
「無裁定条件の成立」と「リスクの市場価格が存在し一意に定まること」は同値である。
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